清掃コストは1泊いくらか — 泊数で分けると連泊が有利になる
一棟貸しの収支を見ていて、単価や稼働率より先に目につくのが清掃の回数です。同じ30泊を売っても、1泊が30回入るのと、3泊が10回入るのでは、清掃が20回違う。清掃1回にかかるお金は室料と関係なく固定なので、この差はそのまま利益に出ます。この記事では、私たちの予約データで清掃料金が支払総額に占める割合を泊数ごとに分け、1回の清掃にかかるコストを積み上げた試算で、連泊をどう優先するかを考えます。
SUMMARYこの記事で分かること
- 清掃料金が宿泊費全体に占める割合は、1泊だと2割近く、3泊で1割弱まで下がること
- 清掃1回のコストは業者代だけではなく、リネンと消耗品を含めて考える必要があること
- 1泊を断るのではなく、週末の最低泊数と連泊割で、清掃回数を減らしながら売上を守る設定の組み方
まず整理:清掃1回にいくらかかっているか
民泊の清掃代行の相場は、1回4,500〜12,000円あたりに集まっています。30㎡以下のワンルームで3,000〜5,500円、50㎡前後で4,000〜6,800円、6人以上が泊まる一棟貸しになると1万円を超えることが珍しくありません。㎡単価で150〜300円、時給制なら5,000円前後という見積もりもあります。
ただ、業者に払う金額だけが清掃コストではありません。1回の入れ替わり(ターンオーバー)ごとに動くお金を並べると、次のようになります。
| 項目 | 内容 | 6人物件の目安(仮定) |
|---|---|---|
| 清掃の実費 | 業者への支払い、または自社スタッフの人件費と移動 | 8,000円 |
| リネン | シーツ・タオル類のクリーニングと交換。人数分 | 2,000円 |
| 消耗品 | アメニティ、トイレットペーパー、洗剤、ゴミ袋 | 1,000円 |
| 合計 | 1回の入れ替わりで動く固定費 | 11,000円 |
金額は仮の置き方で、物件の広さと運営の形で変わります。ここで言いたいのは、清掃を「1回8,000円」と見ていると、実際には1万円を超える固定費が1回転ごとに出ている、という構造のほうです。
私たちの物件では、ゲストに請求する清掃料金を、この実費の目安に近いところで設定しています。以下では、その清掃料金をコストの近似として使います。
泊数で分けると、清掃の重さが変わる
確定予約のうち清掃料金がついている約1万5千件を、泊数ごとに分けました。

| 泊数 | 予約の割合 | 支払総額のうち清掃料金の割合(中央値) |
|---|---|---|
| 1泊 | 3割弱 | 2割近く |
| 2泊 | 3割 | 1割強 |
| 3泊 | 2割強 | 1割弱 |
| 4泊 | 1割 | 7%前後 |
| 5泊以上 | 1割 | 5%前後 |
1泊の予約では、ゲストが払う金額の2割近くが清掃料金です。3泊で1割を切り、5泊以上では5%前後まで下がります。清掃料金は定額なので、泊数で割れば当然こうなるのですが、割合で見ると1泊と3泊で倍以上違う。この差が、そのまま事業者側の粗利の差になります。
ここで見落としやすいのが、1泊の予約は単価が高い、という事実です。私たちのデータでは、1泊予約の1泊あたり支払額は、2泊予約の1.3倍前後、3泊予約の1.5倍前後あります。週末の1泊需要に短期の割増がついているからです。1泊は「利益が薄い」のではなく、「単価は高いが回転コストが重い」予約です。だから1泊を断る、という話にはなりません。
誰が1泊で、誰が連泊なのか
泊数は国籍でかなりはっきり分かれます。
- 日本からの予約は6〜7割が1泊。金曜・土曜チェックインが半分で、週末に1泊の使い方が中心
- 韓国は1泊が2割で、2泊と3泊が8割超
- 台湾・香港・欧米豪は3泊前後が中心で、4泊以上も2割前後
定員7〜8人の物件では1泊予約が3分の1を占め、定員4人以下の物件では1割半にとどまります。大型物件ほど1泊の週末利用が多く、清掃の回転コストが重くなる構造です。

試算:3泊を1割引きで売っても、1泊を3回売るより残る
6人物件で、室料を1泊30,000円、1回転の固定費を上の表の11,000円と置いて、同じ3夜を売る2つの形を比べます。
| 売り方 | 売上 | 回転コスト | 残り |
|---|---|---|---|
| 1泊を3回(清掃3回) | 90,000円 | 33,000円 | 57,000円 |
| 3泊を1回、室料1割引き(清掃1回) | 81,000円 | 11,000円 | 70,000円 |
| 3泊を1回、室料そのまま | 90,000円 | 11,000円 | 79,000円 |

1割引きにしても、連泊のほうが1万3千円多く残ります。しかもこの比較は、1泊が3回とも埋まる前提に立っています。実際には1泊の予約が飛び石で入ると、間に売れない夜ができます。3夜のうち2夜しか埋まらなければ、1泊側の残りは38,000円まで落ちます。
室料に対する回転コストの比率で見ると、1泊で4割弱、2泊で2割弱、3泊で12%、4泊で1割弱です。単価が1.3〜1.5倍ある1泊でも、この比率の差は埋まりません。
POINT連泊割は「値引き」ではなく「清掃を1回にまとめる対価」
3泊で1割引くことに抵抗があるなら、清掃2回分(この試算で22,000円)を割引の上限と考えると判断しやすくなります。3泊で9,000円引くのは、清掃2回分の4割ほどを渡している計算です。
結論:1泊を断らずに、清掃回数を減らす設定
方針は「連泊を先に取り、1泊は直前と平日で拾う」です。
| 設定 | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 週末の最低泊数 | 金曜・土曜チェックインは、先の日付では2泊以上 | 韓国のグループは2〜3泊で1〜2か月前に入る。週末を1泊で早く埋めると、その連泊予約を弾く |
| 直前の1泊可 | チェックイン14日以内など、直前に限って1泊を受ける | 日本の週末1泊は5週間前後、1〜2人の韓国客は3〜4週間前に入る。空いた枝はここで埋まる |
| 連泊割 | 3泊以上で5〜10%。上限は清掃2回分 | 割引しても清掃回数が減る分で残りが増える |
| 清掃料金 | 泊数にかかわらず定額のまま | 予約サイトの合計表示では、連泊ほど1泊あたりが自然に安く見える。別途の連泊割と二重にしない |
| 隙間の夜 | 予約と予約の間に1夜だけ空いたら、その夜は最低泊数を1に落とす | 飛び石の空きは連泊で埋まらない。1泊で売るしかない |
事前に確認しておくこと:
- 自分の物件の1回転の固定費(清掃・リネン・消耗品)を、業者代だけでなく積み上げたことがあるか
- 直近1年の予約を泊数で分けたとき、1泊がどれくらいあるか。国籍・曜日でどこに集まっているか
- 週末の最低泊数が、先の日付と直前で分かれているか
- 連泊割の率が、清掃2回分を超えていないか
- 予約と予約の間の1夜だけの空きを、自動で1泊可にする設定(PriceLabsなどの隙間ルール)が入っているか
清掃回数は、単価や稼働率のように市場に左右されない、自分で決められる数字です。同じ稼働で清掃が2割減れば、その分はそのまま残ります。
補足:数字の前提
清掃料金の割合と泊数の分布は、私たちが福岡で運営する物件の確定予約(2024年9月〜2026年9月チェックイン)から集計しました。一棟貸しが多い構成なので、ワンルーム中心の運営では清掃料金の割合はもっと小さく出ます。1回転の固定費は仮定で、業者への支払い以外の項目は物件ごとに積み上げ直してください。相場は民泊清掃代行の料金比較記事(2025〜2026年)を参考にしています。
参考にした主な資料:くらしのマーケットマガジン 民泊清掃代行の料金相場、民泊総合研究所 民泊清掃代行の料金相場(2026年)、bicsminpaku 民泊清掃の料金相場 2025年版



